8-1. 種子散布と散布体
8-1. 種子散布と散布体
植物にとって長距離の移動の機会は花粉と種子のときだ。種子が母株から離れて移動することを種子散布[seed dispersal]という。花粉の移動=送粉がゲノム一組の移動であるのに対し種子散布はゲノム二組の移動なので、遺伝的な基準で見ると種子散布は送粉の2倍の効果がある。また、花粉は同株の別の株がないところへは移動できない(しても無駄になる)のに対し、種子散布にはそのような制限がなく、他の株がないところへ移動して新しいすみかとすることもできる。
花のかたちの多様性が、何を使って花粉を運ぶか、そのために花のどの器官をどのように使うか、を反映していた。同じように、果実の多様性も、次の2つを反映している。
- 散布単位[dispesal unit](散布体)は何か
- 散布様式: 何をどのように使って種子散布するか
8-1-1. 散布体
「種子散布」と言っても、種子だけが散布されるとは限らない。
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熟したら果実に裂け目ができて種子が外に出る→種子が散布される(こういうタイプの果実を朔果[capsule]と呼ぶ)では、種子が散布の単位となる。しかし、種子が果実に入ったまま散布される場合も多い。
また、ヤエヤマアオキやツルアリドオシのように、複数の果実がひとかたまりになって散布されるものもあれば、ケヤキのように複数の果実がついた枝ごと散布されることもある。
ツルアリドオシ(アカネ科)の散布体は、2つの花の下位子房が1つになっているもの(多花果)
ヤエヤマアオキ(アカネ科)では、花序の花が子房の部分でつながりあっていて、花序一個分の果実(1a)が一塊りの果実(多花果)となる。
ケヤキは果実がついた小枝がつけねから取れて散布体となる。
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ときには、果実が複数の部分に分割されて散布される場合もある。分かれたそれぞれの部分を分果と呼び、中には種子が1個ずつ入っている。こういうタイプの果実は、分割のしかたによって分離果[schizocarp](セリ科・カエデ科など)、節果[loment](ヌスビトハギなど)に分類される。
トウカエデ(カエデ科|ムクロジ科)の果実。熟すると果実は2つに分かれて(つまり、分果には羽根が1つずつ付いている)落下する。
ヌスビトハギ(マメ科)の果実。果実は深くくびれていて、くびれの部分は離れやすくなっており、三角形の分果1つ1つが離れて散布される。分果の表面には細かな曲がったトゲがついていて、動物に貼りつく。
もっと風変わりなものになると、ヒルギ類のように枝についたまま種子が発芽して、子房を突き破って胚が伸びた状態になったものが散布されるものもある。
オヒルギの花と樹上で成長した胚。
母親の植物から離れ移動する単位を散布体と呼ぶ。上で述べたように、さまざまなものが散布体となる。
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- 種子
- 実生(芽生え)
- 果実
- 果実の一部
- 複数の果実の集まり
8-1-2. 散布様式
送粉のときと同じように、植物自身の動き(自動散布)・風(風散布)・水(水散布)・動物(動物散布)の4つが、散布の原動力となる。自動同花送粉と比べると自動散布は少なく、一方、水媒花がまれなのに対して水散布はかなり多数に上る。このことは、花粉に比べて果実・種子がずっと大きく重いことで説明できる。
散布様式は、4つの原動力に、風による果実の振動を利した散布(振動散布)を加えた5つに大きく分けられる。動物散布は、さらに、動物の体に付着して運ばれる「付着型」と動物の食物として運ばれる「被食型」とに分けられる。被食型には、散布先で動物の糞として排泄されるもの、そして「アリ散布」と「貯食型散布」が含まれる。
2つの散布方法を併用しているものも結構多く、例えば、スミレ・ムラサキケマンはアリ散布と自動散布を併用する。特定の散布様式を持たないもの(「重力散布」と呼ばれることもある)など、上の分類に当てはまらない種類も多い。また、まだどのようにして散布されるか調査されていないものもある。
8-1-3. 生育地と散布の方法のつながり
水散布(海流散布)・動物付着散布・動物被食散布(糞として排泄されるもの)は、他のやり方と比べると、長い時間を掛けて遠くへと散布することに長けている。このような散布法では、単に母株から離れるだけでなく、母株が生えているのと同じような場所へと移動するようになっていることがある。水散布される植物は、水中や湿地・水辺に生えているものに多く、散布先もそのような場所になる。樹木の果実を食べる鳥は、森林から森林へと移動するので、鳥に食べられた種子も森林から森林へと移動することになる。トゲ・毛・粘液を使う動物付着型の植物は、ほとんどが草で、森林のへりの草むらや草原に多い。このようなところは動物の移動経路や食事の場所になっている。アリ散布・風散布・自動散布では、平均散布距離が他 のものより短いせいか、このような傾向はあまりはっきりしない。
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