1Q84物語の言の葉拾いBOOK2
1
章
2
章
「番犬には替わりがいる」
「つばさがいなくなりました」
「ドイツ・シェパードが死んで、その翌日につばさちゃんがいなくなった」
この金魚はつばさのために買ったものです
歪み
犬が死んだことが、引き金
つばさに向けられたメッセージ
決心をしてここから出て行った
何があっても処理しなくてはなりません。つまりあちら側に移ってもらうということ
巫女
四人のうちの最初の犠牲者は、リーダーの実の娘
顔をしかめた
あなたにはその人物を処理する用意ができていますか
あなたは死ぬのが怖い?
リーダーとあなたが二人きりになる状況を設定する
顔が変わってしまう、整形手術
私には二人の子ども〜自殺
タフな女性
ナ� �アガラ〜あれは世界で一番退屈な町だった
「拳銃がひとつ必要なの」
刑事責任
マダムの安寧と健康を護る
チェーホフがこう言っている「物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない、と」
「でもこれは物語じゃない。現実の世界の話よ」「誰にそんなことがわかる?」
タマル
老け込んだ老婦人
金魚蜂の二匹の金魚
つばさ
十歳の女の子
この男にレイプされた少女の四人目がつばさです
タマル
サハリンで終戦の前の年に生まれた。1945年、ソビエト軍に占領され、朝鮮人の両親は捕虜となるが、赤ん坊の彼は日本人帰国者に託されて北海道に渡る。その後、孤児施設で育てられ、かたちだけの養子縁組により日本人名「田丸健一」をもらう。本名は「朴」
青豆よりほんの数センチだけ背が高い(170センチ?)
新しい番犬
玄関
二人
居間
ソファ
丸いガラスの金魚蜂
白い百合の花が三本
グラスが三つ
二匹の金魚
グラスを二つ
二度と起きなければと
五時
三十年の住宅ローン
二十連発セミオートマチック
氷とレモンの入ったアイスティ
麻布の商店街で小さな祭り(『麻布十番祭り』?)
シェリー酒
夏の午後に常温のシェリー酒
コードバンの靴
NHKの受信料
アメリカン・エクスプレス
マスターカード
函館近郊の山中にある孤児のための施設
(トラピスト学園?/トラピスト修道院・日本初の男子修道院)
セックスのあとのレコード
天才的な二塁手のように美しくプレイする
「私にはあなたの知らない過去がたくさんあるの。誰にも作り替えようのない過去がね」
「話題の高校生作家失踪か」
戎野先生は梃子を使って大きな不吉な岩を持ち上げ、そこに太陽の光をあて、岩の下から何が這い出てくるか見届けようと待ち構えている。
「何か重要なものを創り上げるには、あるいは何か重要なものを見つけ出すには、時間がかかりますし、お金がかかります。〜時計は今もちくたくと時を刻んでおります。〜時間と自由、それが人間にとってお金で買えるもっとも大事なものです」
私どものリサーチャー
助成金の話はどう考えても胡散臭い。
老婆� �、余計なこと
口にファスナーをかける身振り、匂わせる
私どものメッセージも受け取っていただけたわけです。
普段は開けることのない抽斗の奥からひっぱり出してきたような微笑み
うす気味の悪い人
構文の精度を確認するみたい
週刊誌が騒いでいる
「シートベルトを締めた方がいい」
もりのなかではきをつけるように
新聞記事掲載
「ふかえり」こと深田恵里子さん(17歳)
保護者である文化人類学者、戎野隆之氏(63歳)
担当編集者である小松祐二氏
理事長の秘書
経営実務のほとんどを処理する有能な女性。スタイルがよく、センスも素晴らしい
牛河
背の低い、四十半ばとおぼしき男、くびれを失った胴、贅肉、扁平に禿げあがった頭頂部、陰毛を思わせるまわりの縮れ毛、体型から顔立ちまですべてが左右非対称の男、服飾を意図的に冒涜しているようなセンス、名刺には、「財団法人 新日本学術芸術振興会 専任理事 牛河利治」とある。地面の暗い穴から這い出てくる気味の悪い何かを連想させた。
小松
アパート
朝の早い時刻にヤナーチェックの『シンフォニエッタ』を聴く日々の習慣
売店で新聞
喫茶店
六月二十七日の夜から行方不明
六週間にわたりベストセラー
アパート
シャワー
予備校の昼休み
陰鬱な応接室、ソファー
低いテーブル、山を描いた油絵
花瓶にはダリアに似た花
三百万円の年間助成金
二口吸った
四ツ谷
麹町
四階建て
オフィス
三階
二十分後
二本の庖丁
若い頃のルイ・アームストロング
W・C・ハンディーのブルース
バーニー・ビガード
トラミー・ヤング
『アトランタ・ブルース』
ジミー・ヌーン
シドニー・ベシエ
ピー・ウィー
ベニー・グッドマン
バタートーストと固ゆで卵のモーニングセット、コーヒー
三菱自動車
青梅署
アニエスベーのサマー・ジャケット
煙草
セブンスター
映画『スティング』
冷めた紅茶
3
章
4
章
二つの月は、彼女の心を乱した
ストレッチング・プログラム
身体を極限近くまで伸ばしながらその音楽を聴くと不思議に安らかな気持ちになれた。
拷問するものであり、されるもの
自己完結性
目的遂行のためには最短距離を進む訓練を受けている。余計なことは口にしない方がいい。
「できるか?」「できると思う」
月たちの視線
荷物の整理
日にち
身体的な問題こそが、唯一の弱点であり、突破口
筋肉ストレッチング
二人きりになります
相手が誰であれ、ためらいません。アマチュアはためらいます。
「あんたはたった今、二つの重大な間違いを犯した」
トリガーガード
人間にとって死に際というのは� ��事なんだよ。生まれ方は選べないが、死に方は選べる
口の中に銃身を突っ込んで、下から脳味噌を吹き飛ばすこと
悪いことは言わない。生き延びることを考えた方が賢明だ
いざというとき自分よりルールを優先させる
経歴はクリーン
貸しをできるだけ多くしておく
用心深い
「チェーホフの小説の裏をかけ」
トーンアーム
電話
タマルの声
雌のドイツ・シェパード
老婦人
鍵のコピー、運転免許証、パスポート、健康保険証
黒光りのする金属製品
小型のオートマチック拳銃
植物状態
セキュリティ、
ボディガード
用心棒
この男
ポケットベル
新聞社会面
あゆみの顔写真
性的饗宴のパートナー
中野あゆみさん(26歳)、独身。東京都新宿区在住。渋谷のホテルの一室で首を絞められ、殺害されていた。全裸だった。両手には手錠をかけられ、ベットヘッドに固定されていた。手錠は正式な官給品だった。
ふたつの月、小さなベランダ
ターンテーブル
十時前に電話のベル
十日ほど前
明日の七時に(7/31?)
翌日の月
外苑西通りをまたぐ歩道橋(キラー通り歩道橋〜麻布に通じている)
普通預金が六十万円
定期預金が二百万円
四十万円
玄関、四台のモニター・スクリーン
480グラム
ショート9ミリ弾、1968年から製造
七発の弾丸
五百グラム
七月四日
喫茶店で銃と実弾七発、五十万円
三桁の短縮ボタン
二週間がこともなく過ぎた
一日一度
更に一週間
八月終わり
(8/27?)
夕食、夕刊
ジョージセルの指揮するヤナーチェック『シンフォニエッタ』
ドッグ・フード
サンドイッチ
熱く濃いコーヒー
ミルク
ブラック
サンドウィッチ
黒パンにキュウリとチーズ
自衛隊レンジャー部隊
ヘックラー&コッホのHK4
東条英機は心臓を撃つつもりで引き金を引いたが、弾丸が逸れて死ねなかった。裁判の後、絞首刑
千駄ヶ谷の駅近くにある『ルノワール』
新宿駅のコインロッカー
渋谷のホテル:『アフターダーク』のアルファヴィルが想起される
冷たい麦茶
自我がはっきり確立される前に、まだ小さな子どものうちにそお世界を離れれば、一般社会に同化できるチャンスは十分ある。でもそのチャンスを逃すと、その価値観に従って生きていくしかない。
手を握っていた
精通、精神
彼女のことを考えマスターベーション
枝豆
欠けているのは意欲と積極性
迷ったときには「まあ、いいか」
青豆に向かって語りたいこと
意志の強そうな横顔には、時による風化を許さないという決然たる思い
がっかりするのはむしろ青豆の方
飛行機の操縦モードを「自動」
変化、精神的に成長、
三十前にしてようやく
現在という十字路に立って過去を誠実に見つめ、過去を書き換える ように未来を書き込んでいくこと。
罪の悲しみは
悔いの心を千々にさいなむ
我が涙のしずく
うるわしき香水となりて
まことなるイエスよ
御身に注がんことを
(『マタイ受難曲』)
女は知っていたイエスが死ななくてはならぬことを。イエスもまた知っていた。自らが近く死出の道を歩まなくてはならぬことを。
真新しい八十八個の鍵盤を前にしたウラジミール・ホロビッツように、十本の指を静かに空中に波打たせた。
夕暮れの東の空に月が二個〜世界の風景を描いた。
アルバイトの同僚「証人会二世」の二人
その少女
十歳の少年と少女
ワード・プロセッサー
イエス
高価な香油をそ注ぎかけた
ある女(「ベタニアのマリア」と呼ばれている)
学生時代
酒類卸店
クラス
四月
五年生
バス停
公立の中学校
三十歳になろうとしている今
スーパーマーケット
放課後の小学校の教室
二十年前
二本目のビール
市川の商店街
枝豆
海老、牛乳、豆腐、レタス、クラッカー
缶ビール
枝豆
生姜
セロリ、マッシュルーム
チャイニーズ・パセリ、海老
海老と野菜の炒め物
『マタイ受難曲』アリアの歌詞
「ベタニアの塗布」のアリア
ウラジミール・ホロビッツ
5
章
6
章
この世界にあって、青豆は簡単には泣かない。泣きたいことがあれば、むしろ腹を立てる。
大塚環が自殺したとき以来
友情に似た気持ち
理想的な組み合わせ
無敵のセックスマシーン
『渋谷のホテル、婦人警官殺人事件』
欠落、地球の果ての砂漠
「幸運を祈ると言いたいところだが〜役に立たないだろう」
「部屋にゴムの木の鉢植えがあるんだけど、これの面倒を見て欲しい」
なぜchemealeonはない
「ごく控えめに言って、無謀だ。そしてきりというものがない」
「そうかもしれない」
「金魚は永遠に買えないかもしれない」
「かもしれない」
菜食主義の猫とネズミが出会った話
「猫さんお願いです。私を食べないで下さい」
「俺は肉は食べないよ。そいつは嘘じゃない。だからおまえをくわえて連れて帰って、レタスと交換するんだ。」
ポイントを見つけるのはあんたの自由だ
心温まる話
ボディサーチ、用心深い
抽斗はみんな空っぽ
アイデンティティが失われることに対する抵抗はなかった。それはむしろ歓迎するところ。
人生のリセット
貧弱な一対の� ��房、渇望
青豆の中にいる三十歳になった天吾は〜ひとつの仮説に過ぎない。
ここにある現実の非現実性を強調するための音楽
「さよなら」
部屋にではなく、そこにいた自分自身に向けた別れの挨拶
誰
大塚環
あゆみは現職の警察官であり、青豆は連続殺人犯
タマル
ポケットベル
売れ残っている貧相なゴムの木
菜食主義の猫
ネズミ
殺されても文句の言えないネズミ野郎(BOOK 1)
旅行用バッグ
ショルダーバッグ
ヤナーチェック『シンフォニエッタ』、ボヘミアの草原を渡る風
この世界
二度と、
午前四時前に〜コンビ二に寄って
あゆみが死んで五日後の朝(9/1?)
三度目のコール
今夜七時
ホテル・オークラ本館のロビー
新宿駅
三日に一度
三十分ばかり眠った
内側からしか鍵のかからない牢獄
大きなパックのオレンジジュース
ヘックラー&コッホHK4
新宿駅のコインロッカー
コーヒー
クロワッサン
卵とハムとバター、ハムエッグ
オレンジジュース
ヴィヴァルディの木管楽器のための協奏曲
コロン
ナイキのマークのついたビニールのジムバッグ
センセーショナルな見出し
トラブルを楽しむ
汁気たっぷりのスキャンダルが盛大に破裂し、関係者全員が空高く吹き飛ばされてしまうことを、心の底では望んでいるのかもしれない。
アキレス腱、「尻に火」
ダミー団体、盗聴?
マジック・リアリズムの空気を吸ったフランソワーズ・サガン
我々は最後までミステリアスな疑問符のプールの中に取り残されたままになる。それこそが著者の意図かもしれないが、そのような姿勢を<作家の怠慢>と受け取る読者は決して少なくはないはずだ。〜最後まで読者を牽引していくことに作者が成功しているなら怠慢とは呼べ ないのではないか。〜核兵器を廃絶することも、テロを根絶することも、アフリカの旱魃を終らせることも、ジョン・レノンを生き返らせることもできず、神様同士が仲間割れして、激しい喧嘩を始めることになる〜その無力感を思えば〜罪の軽いほうではないか。〜『空気さなぎ』は驚くべき読者を惹きつけている。それ以上の何が必要とされるのだろう。
家内は既に失われてしまった
まるで因果が巡っているみたいだ〜謎の若い男は天吾自身であり、天吾が抱いているの女は安田恭子だ。構図はまったく同じ
二度と彼女と会えないのだという実感
「直感とでも申しますか」(「勘だよ」といったのは小松)
老婆心〜ある年齢を過ぎると、人生というのはものを失っていく連続的な過程に過ぎなく� ��ってしまいます。
特殊な蛇口
我々はとても長い腕を持っています
ぽつんぽつんという"したたり"
伝染病のアナロジー
パンドラの箱
『思考犯罪』
小松、封筒
のたくった字
『空気さなぎ』の書評や関連記事
年上のガールフレンドは天吾の部屋を訪れなかった。
世界中の神様
不吉な響きの電話
安田
安田恭子
死んでしまった電話
牛河
クライアント
ただの交渉代理人
あなた方はメイン・キャリア
ある日
六ヶ所
先週の金曜日
電話のベル
火曜日の夜の九時過ぎ
二度と、週に一度、反復、子どもが二人、十歳も年下
いずれにせよ
また電話
十時十二分
黄昏た領域
抜き差しならないところ
ちくたくちくたくと休みなく
とっくり
一方的
一人ぼっち
フランソワーズ・サガン
核廃絶、テロ根絶、アフリカの旱魃、ジョン・レノン
緑茶
ルイ・アームストロング、ビリー・ホリデー、バーニービガード、デューク・エリントン
ジョージ・オーウェル
7
章
8
章
お祈りの文句
「天上のお方さま。
あなたの御名が
どこまでも清められ、
あなたの王国が
私たちに
もたらされますように。
私たちの多くの罪を
お許しください。
私たちの
ささやかな歩みに
あなたの祝福を
お与えください。
アーメン。」
「ダプルプレイをとることを生き甲斐にしている二塁手と遊撃手のコンビのように」
ボディサーチ
顔を赤くする
二人組はアマチュア
お祈りは効く
他言無用
十分な謝礼
守秘義務
聖域、神聖なもの
強い心と長い腕
神聖さというものは、どのような信仰であれ、信仰のもっとも根幹にあるものです。
穢れ
強い心と長い腕を持ってい ます
想像上の引き金
この世界には我々が足を踏み入れてはならない、あえて踏み入れるべきではない領域があります
祈りの言葉を、声に出さずに口の中で繰り返した
ウェイトレス
二人の若い男
ポニーテイルの長身の男とずんぐりした鼻の身長165センチほどの坊主頭の男
六時五十五分
七連発の小型自動拳銃
コーヒーセット
怪しげな二義性
三度の食事
三人
客用エレベーター
二メートルばかりのあいだ
七階※
スイートルーム
二度ノック
居間
化粧室
※七階
それはユダヤ・キリスト教における"SEVENTH HEAVEN"(第七天:神と天使のいる最上天、至高の幸福)を示唆し「7」は天国への数を象徴していると解釈できます。"SEVEN STEPS TO HEAVEN"
はマイルス・デイビスのお馴染みのナンバーですね♪
隣接した部屋
ナイキのジムバック
トレイに載せたコーヒーセット
下着と生理用品
白雪姫
アディダスのジャージ
六本木
あなた方はパンドラの箱を開けてしまった
パワフルな組み合わせ
まるでソニーとシェールみたいだ。最強のデュオ。
ビート・ゴーズ・オン
追跡妄想
父親に会いに行く
旅をテーマにした短編小説のアンソロジーの中の『猫の町』
駅員のいない駅で降り石橋をわたった先の町
この世ではない場所
失われた場所
一進一退
逆方向の移動はない
父親の残骸
内省や想像力とは無縁だったが、それなりの倫理を具え、単純だが強い意思を持っていた。
僕は天吾です。あなたの息子
です
私には息子はおらない
あなたは何ものでもない
「知識は貴重な社会資産です 〜NHKはみなさんの受信料を必要としています」
マントラのようなもの
なぜ自分自身を愛することができないのか?それは他者を愛することができないからです。人は誰かを愛することによって、そして誰からか愛されることによって、それらの行為を通して自分自身を愛する方法を知るのです。
「空白が生まれれば、何かがやってきて埋めなくてはならない」「あなたが残した空白をかわりに埋めるのは誰なんでしょう」「あんただ」
「あんたはの母親は空白と交わってあんたを産んだ。私がその空白を埋めた」
「説明しなくてはそれがわからんというのは、どれだけ説明してもわからんということだ」
空白と記憶のせめぎあい
安田という人物
牛河
安田恭子
才人編集者小松
戎野先生
マスコミ
教団「さきがけ」
「リサーチャー」
天吾の父親
四年前にNHKを退職し、ほどなく認知症患者のケアを専門とする千倉の療養所に入った
猫たち
自警団
三匹の猫
療養所受付の中年看護婦
「田村」の名札
老人(父親)
元NHKの正規職員
短い白髪
三本のしわ
ヴァン・ゴッホの晩年の自画像を思い出させた。
満州で送った、開拓農民
頑強な狭い魂と陰鬱な記憶
(BOOK 1.8章でも父親の経歴が詳細に語られている)
二度と
二人ひと組
一方的
二本の夜の電話
日々が過ぎ去っていった
中央線快速電車
午前十時
終点東京駅
十一時半
館山行きの臨時特急
二時過ぎ
千倉
駅構内のレストラン
鐘撞き台
満月の夜
三日目の夜
くんくん
館山で乗り換え
千倉
海辺の匂い
タクシー
療養所
二年前
ラウンジ
部屋
三つの棟
火葬場
ベットが二つ
机が二つ
1930年代ドイツで書かれた話
海辺の土地
遠い海鳴り
ソニーとシェール
カレーライス
サラダ
『猫の町』
(萩原 朔太郎著『猫町』や天沼春樹著『猫町∞』など類推)
猫の歌
手風琴
ジェフ・ベック
ヴァン・ゴッホ
『大菩薩峠』
9
章
10
章
「お時間です」
二種類の異なった音
覚醒のためのプロセス
「視る」
網膜に問題
『リーダー』
信者になるように育てられた
幼い頃に植えられたイメージから、人は決して離れることはできない。
『証人会』
「終末論を中心に設定された宗教は、わたしに言わせれば多かれ少なかれインチキだ。終末とは、いかなる場合においても個人的なものでしかない」
筋肉の硬直
仮死状態
麻痺、勃起、巫女、『恩寵』
まわりには複数の女
勃起が続く間、全員十代の三人の女がかわるがわる上に乗り性交する
性的快感のない行為
そのような麻痺状態は天からもたらされた恩寵であり、一種の神聖な状況なのだと考えられている
巫女の役割
交� �ることは勤めのひとつ
麻痺の時間は少しずつ長く、回数も増えている〜全身をくまなく刺す痛み、頭痛、脱力感
それが『恩寵』の代償としてわたしの受け取っているもの
「彼らはただ、利用価値のなくなった乗り物を乗り捨てていくだけだ」
「あなたにしかできないことが」
小山のような黒々とした物体
不定形な輪郭
長い髪、筋の通った大きな鼻、深く窪んだ目、静謐で知的な雰囲気を漂わせている大柄な男
「リーダー」
四十代後半から五十代前半
女たち
巫女
彼ら
真っ暗な部屋
午後7時20分
7:21、7:22、7:23
水道の蛇口を閉めたみたい
大都市の夜特有の光
三人の女性を相手に三度射精する
東京タワーのイルミネーション
「推測があたっているとしたら、僕は気が楽になる」
あなたはその町で僕を育ててくれた。空白を埋めるように。
「さよなら、お父さん、近いうちにまた来ます」
父の目から一筋の涙
自分が新しい人間になっている
これでおれはやっと出発点
「いっしょにいたほうがいい」
「ふたりでちからをあわせる」
「ソニーとシェール」「最強の男女デュオ」
『さきがけ』がソウサクをうけた
まるで巣をつつかれたスズメバチみたいに
「だからこそ」
身の安全、そのかわりに求めるものは"沈黙と忘却"
申し出は拒絶された
安田恭子という女性のこと
警告
「世の中には知らないままの方がいいこと〜たとえばあなたのお母さんのこと〜真相を知ることはあなたを傷つけます。またいったん真相を知れば、それに対する責任を引き受けないわけにはいかなくなる」
ハードキャンディは、ハザードを窒息させる
リトル・ピープルがさわいでいる、〜いへん
父親と二人
カラス
上り特急列車
暗くて寂しい海岸線
蛇が長い舌を突き出すように赤い火を吐く煙突の林
ふかえりからの電話
「はらをたてているひとたち」
受付の女性
牛河
不幸なニュースのよう
おおきなカラス(夕方になるといつもやってくる)
リトル・ピープル
タクシーが来るまでのあいだ
窓際
出なくてはならない時刻
自宅に着いたのは十時前
翌朝、八時過ぎ
長い凪のような二週間
八月が終わり、九月がやってきた(9/1?)
その日の朝の十時過ぎ
七回ベル
二百メートルも離れていないスーパーの公衆電話
三回ベル
切る、かけなおす
二度肯いた
二つの講義
職員用の部屋
カフェテリア
八百万の神
一夫一妻制
雷
代々木駅
自動反復するテープ
グラスに二杯水
朝のコーヒー
マルショウ
(『丸正』のことと思われる)
電子レンジにかけただけですぐに食べられる調理済みのもの
冷たい麦茶
カフェオレ
クリームパン
コーヒー
11
章
12
章
苦痛、堰き止められた川の流れ、肘を梃子
二つの行為はそれぞれに対立する目的を持ち、相容れない方法を要求する
あなたの筋肉は被害を受けています
「真実というのはおおかたの場合、あなたが言ったように、強い痛みを伴うものだ。そしてほとんどの人間は痛みを伴った真実なんぞ求めてはいない。人々が必要としているのは、自分の存在を少しでも意味深く感じさせてくれるような、美しく心地よいお話なんだ。だからこそ宗教が成立する」
「私には愛があります」
あなたのそういうあり方自体が、宗教そのものだ
宗教とは真実よりはむしろ美しい仮説を提供するもの
マジック・タッチ
「あちら側」に送� �込むこと
地下室に行って、メインスイッチを切るしかない
彼らの欲求はすなわちわたしの欲求になった
王は任期が終了すれば殺されるものと決まっていた。〜王とは人々の代表として<声を聴くもの>であったからだ。〜統治することは、神の声を聴くことと同義だった。しかしそのようなシステムはいつしか廃止され、王が殺されることもなくなり、王位は世俗的で世襲的なものとなった。そのようにして人々は声を聴くことをやめた。
<声を聴くもの>になった
歪められた顔
あなたに命を奪ってもらいたい
奇蹟は悪魔の誘惑
この世には絶対的な善もなければ、絶対的な悪もない〜重要なのは、動き回る善と悪とのバランスを維持していくことだ。〜均衡そのものが善なのだ。
システムはいったん形作られれば、それ自体の生命を持ち始める
羊の群れの中のいちばん弱い一頭
もう一度歪めた
殺したのは彼女自身の内包していたもの
ここで死ねば空白が生じる
取り引き
命を奪ってくれるなら、川奈天吾くんの命が助かるようにしてあげよう。
君たち二人の運命
入るべくしてこの世界に足を踏み入れた〜それぞれの役割を与えられることになる
この1Q84年に
大きく歪められた
「心から一歩も外に出ないものごとなんて、この世には存在しない」
ヨーガマット
男
この男
彼ら
リトル・ピープル
王
<声を聴くもの>
当時、娘が彼らを『小さな人たち』と呼んだ
わたしがその名前を『リトル・ピープル』に変えた
悪魔とキリスト
手錠を持った女友だち
中野あゆみ
三十分近く
二つの行為
三十分後
雷鳴
今に雨が振り出す
首筋に一箇所
鍼を一本
地下室
タイマーの設定を変更するように
一矢報いる
一時的空白
フレイザーの『金枝篇』
置時計
『カラマーゾフの兄弟』
「復讐ほどコストが高く、益を生まないものはほかにない」ウィンストン・チャーチル
大英帝国の予算不足の言い訳
情状酌量の余地
人生の新しい出発点
「汚染」
愉快とは言えない種類の情報
綜合的な「啓示」
宇宙的風景
「白日夢」
「飲酒運転は人生の破滅への一方通行」
世界とは、「悲惨であること」と「喜びが欠如していること」との間のどこかに位置を定め、それぞれの形状を帯びている小世界の、限りのない集積によって成り立っている
「セイコウをしていた」
「性交」
リトル・ピープルがさわいでいるから
いまにわかる
かれらはわたしたちをみている
実際に目にしたことがある
「何人くらいのリトル・ピープルに会ったんだろう?」
ゆびではかぞえられないもの
ひとりでいることはない
ほんとうというのはどういうこと
『猫の町』の話
「そのオハライはした」
お祓い
だいて
リトル・ピープルがいりぐちをみつけるかもしれない
わたしたちはふたりでひとつだから
郵便受け
封筒
普通預金口座
「オフィスERI」
ふかえり
リトル・ピープル
気持ちの良い晩夏の夕暮れ
アパート
1,627,534円
百六十万円
アパートの階段
三階
三階ぶん上がる
三度ノックし、間を置いて二度ノック
一対の耳
九時
雷鳴
不穏な雲行き
十二歳
落雷
九時前
やかんに湯
紅茶の葉
ティーポット
モノポリー
砂糖
米、炊飯器
わかめとネギの味噌汁
鰺の干物
豆腐、ショウガ
大根、かぶの漬け物、梅干
お茶
ムンクの絵
13
章
14
章
「何が本当の世界かというのは、きわめてむずかしい問題だ」
パラレル・ワールドなんかじゃない
世界は1Q84年に変更された
多くの人は、時間性が切り替わったことに気づいていない
蓋然性の問題
事実なのか、仮説なのか?
君の愛がなければ、それはただの安物芝居に過ぎない
Without your love,it's a honkey-tonk parade
『イッツ・オンリー・ペーパームーン』
君が世界を信じなければ、またそこに愛がなければ、すべてはまがい物に過ぎない
仮説と事実とを隔てる線は〜心の目で見るしかない
誰が線路のポイントを切り替えたか?
原因と結果、何らかの意思
対抗モーメント
影は、我々人間が前向きな存在であるのと同じくらい、よこしまな存在である。我々が善良で優れた完璧な人間になろうと努めるほど、影は暗くよこしまで破壊的になろうとする
補償作用、均衡
娘:パシヴァ=知覚するもの
私:レシヴァ=受け入れるもの
観念の姿:ドウタ=生きている影
チーム(天吾くんと娘)
ウィルスと抗体のアナロジー
意思、目的は?
言 葉で説明されたとたん失われてしまう意味がある。
引き寄せ合っている
激しく顔を歪めた
耳を澄ませばわかる。声を聴くこと
無謬性を信じていたわけではない。新しい状況にあわせて、自らの意識を再編成しなければならないことに怯えただけだ。
わたしを失えば空白が生じる
天吾くんの物語を語る能力によって、レシヴァとしての力によって、1Q84年という世界に運び込まれた
取り引き
君はおそらく死ぬことになる
かまいません
君には愛があるから
「命と引き替えにしかできないこともある」
彼のために死んでいったことを、何らかのかたちで知ること
君は重い試練をくぐり抜けなくてはならない。それをくぐり抜けたとき、ものごとのあるべき姿� �目にするはずだ。(カフカ君への言葉から繋がっているようだ)
光と影がひとつになった
リーダー
リトル・ピープル
リトル・ピープルなるもの
鯨
わたしの娘が反リトル・ピープル作用の代理人
つばさちゃん
ウィルスに対する抗体、
ウィルスのキャリア
私というチャンネル
1984年
リーダーの部屋
時間性
ドアは一方にしか開かない
乗客の一人一人
雷鳴が轟いた
もう一人
二人
二十年
十歳
一時的な空白
一方
九時少し前
ひとつになる
沈黙
致命的なポイント
この世界
その世界
稲妻のない雷鳴
ほんの一瞬
三軒茶屋
『イッツ・オンリー・ペーパームーン』
カール・ユング
リーダーの語った『リトル・ピープル』
それが何ものかを正確に知るものはいない。善悪の存在しない、人々の意識が未明の時代から存在していたもの。古代にあっては王は彼らと人々を結ぶ回路となり<声を聴くもの>となり、力のバランスを維持し、すなわち統治を行ったが、それは神の声を聴くことと同義であった。そしてそのような王は任期が終了すると殺されるものと決まっていたが、そのようなシステムはいつしか廃止され王位は世俗的で世襲的なものになった。
名前は便宜的なものであり、彼らを連れてきた娘が『小さな人たち』と呼んだのを受けリーダーがその名を『リトル・ピープル』に変えた。リトル・ ピープルは強大な力を持つが、彼らが力を使うほど、その力に対抗する力も高り、、世界は均衡を保つている。彼らの代理人がリーダーであり、反代理人的存在に娘がなった。
「ふたりでいっしょにもういちどネコのまちにいかなくてはならない」
「オハライをする」
ノアの洪水
方舟
つがい
ソニーとシェール
ヒトのつがいの代表
勃起
「かたくなってもかまわない」
安寧の泥の中
純粋な仮定に基づいた、状況的な想像
きにしなくていい
ねむらなくてはならない
解答への最短距離
乳房はみごとに完全な半球を描いていた
身体がうまく動かせない
うごかすヒツヨウはない
しんぱいしなくていい
できたての小さな性器
挿入
避雷針
蓋然性
「テンゴくん」
秘密のコード
天吾の左手を握りしめていた
金縛り
彼女が求めているのは、自分の感情を天吾にしっかり送り届けること、
ちいさな固い箱に詰められ、清潔な包装紙にくるまれ、細い紐できつく結ばれている。そのようなパッケージを手渡していた。
これが猫の町に行くことなのか
激しい射精
しんぱいすることはない
わたしはニンシンしない。
青豆、と天吾は思った。
青豆に会わなくてはならない
「リトル・ピープルはもうさわいでいない」
空中でするりと小さな円を描いた。
美しい完璧な円だった。
「ねむったほうがいい」
ふかえり
人類の適切なサンプル
十七歳の美しい少女
ニシキヘビのつがい
二匹の若い蛇
十歳の彼自身
その少女
ベット
雷鳴
カップル
三桁のかけ算
一ヶ月以上セックスをしていない
空を二つに分断し、雷鳴が窓ガラスを激しく振るわせた
まだ九時過ぎ
第二次なんとか
五秒か六秒
小学校の教室
放課後の教室
激しい雨もいつのまにかあがっていた
リコーダー
『庭の千草』
15
章
16
章
ぐっすりと
「二時間ほどで目を覚まされるはずです。」
かけがえのない方です
厳しい戒律があるわけではありません
ひどい雷だった
彼の本能は「この女を捕らえなくてはならない」と告げている。
直感
彼女が殺したのは預言者だった。神の声を授かるものだ。しかしその声の主は神ではない。おそらくはリトル・ピープルなるものだ。
「深く眠っている。これ以上はないというくらいに深く」
「いちばんまずいのは怯えることだ」
「都内のセーフハウスに行ってもらう。準備が必要」
シロクマ、ホッキョクグマあなたは何を聞くか
「高円寺」
「高円寺の南口。環七の近くだ。部屋番号は303。オートロックは2831」
「三度ベルを鳴らしてから切り、二十秒後にかけなおす」
二人は腕が立ちそうに見えた。〜でもプロじゃない。あなたとはレベルが違う」
「あるいは」
頭の中で繰り返し復唱〜マントラを唱えるみたいに
「自動拳銃のある風景」
あゆみと交わした会話をふと思い出した。
「『ゲッタウェイ』みたい」
フェイク
でも私は天吾くんを愛している。これは安物芝居なんかじゃない
いよいよお化けの時間が始まる
「リーダー」
「死者」と呼ばれる存在
安全装置が解除されたヘックラー&コッホ
熟睡しているようにしか見えない大きな男
坊主頭
ポニーテイル
タクシー運転手
中年の女
タマル
言葉遣いの丁寧な中年のタクシー運転手
テレビのレポーター
明るい部屋
一刻も
一度着替え
一対の目
心臓が一拍分スキップ
ホテルの廊下
広いロビー
タクシー
二枚のチューインガム
五百グラム
二時間
新宿駅
コインロッカー
百円硬貨
公衆電話
駅を出て少し歩き、目に付いた喫茶店
店のピンク電話
三度呼び出し音
一時間半
二倍
二人組
住宅街の真ん中にある六階建ての洒落た造りの新築マンション
三階
ベランダ
小さな公園を見おろせた
二本ずつ
三組
缶ビール
コーヒーポット
サンドイッチ
コーヒーカップが二つ
新宿駅西口
地下鉄赤坂見附駅の構内に雨水が流れ込み銀座線と丸の内線が一時運転中止
NHKラジオ
フォークソング特集
国電
アイスコーヒー
アルマーニとフェラガモ
ジェイ・ギャッツビーの図書館
円形の掛け時計
ブラウン社のシンプルなデザイン
「たくさん」という概念
「小松さんに会わなくちゃならない」
お金を返す
『空気さなぎ』の報酬
自分の立場、僕自身に対して
一週間仕事を休んでいる
三日目に、身体の具合が思わしくないのでしばらく休むという電話〜
奥さんと子どもが一人いたが、ずいぶん前に離婚している
「様子を確かめた方がいい」
「よく書けすぎている〜十七歳の女の子にしてはね。そして著者は目下行方不明、編集者にも連絡がとれない。誰も乗り合わせていない昔の幽霊船みたいに、本だけがベストセラーの水路を順風満帆、まっすぐに進んでいる
人の表皮細胞は毎日四千万個ずつ失われていく
「ひょっとして次は僕の番かもしれない」
「あなたはうしなわれない」
「オハライをしたから 」
「おかねはもんだいではない」
青豆の行方を探す
彼らは好きなとき勝手に人に会いに来る。しかしこちらからは自由に会いに行けない。〜外の世界から自分たちのコミュニティーを守ることが彼らの習性
暗黒の時刻に暗黒の場所で、激しい雷鳴に囲まれながら、ひっそりとおこなわれた行為
「僕は今ある人を捜している」「女の人だ」
「僕はたぶん長いまわり道をしてきた〜僕という存在にとってのひとつの大事なおもしの役割〜それがあまりにも中心にあったために、かえってその意味を掴み切れなかったみたいだ」
「アオマメ」〜「そのひとはすぐちかくにいるかもしれない」
ふかえり
小松の会社に電話
電話に出た女性
顔見知りの別の編集者
青豆
「証人会」
アオマメ
時計は六時過ぎ
窓の外はすっかり明るくなっていた
(9/2?)
十八世紀前半には高い評価を得たテレマンですが十九世紀に入ってからは、多作故、軽侮を買う。しかし社会の成り立ちの変化が評価の逆転を招いたもの。
一時過ぎ
一人で仕切ってきた
二十三区の電話帳
関東一円
電話局のブース
二次関数
薄暗くなってから部屋に帰る
二十年
乳首のかたち
コーヒー
ペーパークリップ
テレマン作曲
各種独奏楽器のためのパルティータ
ラジオ「バロック音楽をあなたに」
ラモーの鍵盤音楽
マルセル・デュプレのオルガン曲
アールグレイ
トーストに苺ジャム
東京都足立区
安田恭子の残していったレコード
デューク・エりントン、ベニー・グッドマン、ビリー・ホリデイ
ルイ・アームストロング『シャンテレ・バ』
トラミー・ヤング
ジェフ・ベックのツアーTシャツ
17
章
18
章
リーダーの死によって生じた空白
ハンター
青豆の背後に誰がいるか
彼が残していったものは「約束」だった。
教団の中には本格的な焼却場がある
リーダーが死んでも、組織は動き続ける、蛇と同じだ
「これでおしまいです。〜
私たちは完全に正しいことをしたのです。」
「彼も同じことを言っていました」「彼は死の到来を待ち望んでいました」
二度と会えない
「その代わり私たちは何かを共有しました」
外の世界をかろうじて結び付けている絆
「できるだけ幸福になりなさい」
「もしできることなら」
「あれは使ってないね」
「� ��だ使ってない」
孤児院で俺より二つ年下の子供がいた。黒人との混血だった。母親に捨てられ連れてこられた。よくいじめられた。クロとパンパンとの混血。カーストのいちばん底辺だ。そいつは何ひとつまともなことがやれない。ところが彫刻だけはうまかった。サヴァン症候群だ。もっともなぜかネズミの彫刻しか作らないんだ。一人でネズミを彫っていれば幸福そうだった。そいつはよく言っていた『ネズミを取り出す』ってな。そいつはつまり架空のネズミを開放しつづけていたんだ。」
「人が生きていくためにはそういうものが必要なんだ。何かにうまく説明をつけるために生きている節がある」
「生きるための根拠?」
「あるいは」
「そして言いたいことのもうひとつ� �、俺はできる限りあんたを護るということだ」
「ありがとう」
暴力というかたちを通じてしか結ばれない密接な関係
『空気さなぎ』の著者である十七歳の少女が行方不明のニュース
致命的な渦
暴力性がある種の純粋な結びつきを作り出す
顔を歪めるいつもの朝の儀式
ハードカバーの本
『空気さなぎ』
二人組みのボディガード
リーダー
タマルからの電話
マダム
老婦人
リーダー
昨夜処理をした男
タマル
大きなカラスが出し抜けにベランダに、
リトル・ピープルのまわしもの
赤坂見附駅構内の浸水
ホテル・オークラのスイートルーム
NHKのニュース
午前九時過ぎ、ベルが三回
高円寺のセーフハウス
四日から一週間のあいだ
ベランダ
居間のカーペット
一時間
百面相
居間の木製のサイドボード
朝食にリンゴ
ヘックラー&コッホ
「ここからあるいていけるところ」
「かくれているから」
「けがをしたネコのように」
危機的な状況
時間は限られている
特別な場所
役に立つ
満ち足りた猫のように
(BOOK 1ではミルクをなめる子猫のように)
そのひとについて思い出すことがいくつかある。役に立つことがあるかもしれない。
「少し外に出てくる」
「むぎあたま」
青豆を思い出すことは、十歳の少年に戻ること
青豆に握られていた数十秒
あなたは孤独ではない
二人の女性が同じように身を潜めている
多すぎる疑問、少なすぎる回答。毎度のことだ。
本当に彼らが青豆を追っているのだと仮定すれば、その要の役をしているのはこのおれ
靴の中に入った小石のように
月だ、午後三時半に浮かんだ、灰のような色をした岩塊
二人は並んでその月を見ていた〜そのときひそかにある種の心を月に託していたのかもしれない
月は変わることなく人々の味方だっ� �。それは天与の灯火として暗黒の世界をときに明るく照らし、人々の恐怖を和らげてくれた。その満ち欠けは時間の観念を人々に与えてくれた。月のそのような無償の慈悲に対する感謝の念は、おおかたの場所から闇が放逐されてしまった現在でも、人類の遺伝子の中に強く刷り込まれているようだった。集合的な温かい記憶として。
二つ目の月
まるで観念と言語が結束しないときのように。
一九八四年九月、川奈天吾、杉並区高円寺、児童公園、夜空に浮かんだ月を見上げている。間違いない。
月は二個ある。月は相変わらず寡黙だった。しかしもう孤独ではない。
店の中の大学生風のカップル
青豆
月
白昼の月
もうひとつの月
駅の少し手前にある『麦頭』という店
酒と軽食を出す小さな店
小学校の教室の情景
数式の消し残しのある黒板、窓の外から聞こえてくる歓声
一対の瞳
十二月
四分の三の大きさ
児童公園
真ん中に水銀灯、水飲み場、ベンチ、ぶらんこ、
北側には六階建ての新しいマンション
二十年前の月と同じ
滑り台のてっぺん
環状七号線
千葉の海辺
『マザーズ・リトル・ヘルパー』『レディ・ジェーン』
ハムときのことプラウン・ライスを使ってピラフを作り、豆腐とわかめの味噌汁を作った。カリフラワーを茹でて、カレーソースをかけた。いんげんとタマネギの野菜サラダも作った。
コーヒー、プディング
ビール
カールスバーグの生、ミックスナッツ
カルバン・クラインのスーツ
フォア・ローゼス
19
章
20
章
ここではない世界
シンプルで無防備
周到に計算、優れた音調
カクメイはいくぶん尖ったかたち、ピースはいくぶん丸いかたち
考え方は月と同じように満ちたり欠けたりする。
シホンシュギから離れて生きるのが善きことという思いを共有
自然の中の生活
世界にはシホンシュギとコミュニズムという二つのシステムがあり、お互いを憎みあっていた。コミュニズムはもともとは高い理想をもっていたがリコ的な政治家によって歪められてしまった。
少女は罰を受ける
隔離される
「反省のための部屋」
死んだ目の見えない山羊とともに、小さな土蔵の中に閉じこめられた。
世界のルールは既に変更されてしまった
空気さなぎ� �作って遊ばないか
ほうほう
何が出るか
出てきてのお楽しみ
幻想的な童話のような物語
不吉な響き
「我々は大昔から彼らと共に生きてきた。まだ善悪なんてものがろくに存在しなかった頃から」
「あともうちっとだ」
リトル・ピープルが彼女の夢を訪れる〜空気さなぎが割れるころだから見に来ないか
さなぎの中にいるのが少女自身であることを、発見する
「そこにいるのはキミのドウタだ」「キミはマザ」「ドウタはマザの代理をつとめる」「ドウタはあくまでマザの心の影に過ぎない。それがかたちになったものだ」「(キミは)パシヴァ(=知覚するもの)の役目をする」「死んだ山羊はあくまで仮の通路にすぎない」「ドウタを失えばマザは心の影をなくすことになる」「ドウ� �が目覚めたときには、空の月が二つになる」
少女は逃げる
画家の家に引き取られる
トオルと仲良くなったが彼は失われてしまった〜それはリトル・ピープルからのメッセージ。
少女は決心して自分の空気さなぎを作り始める。その通路を逆方向にたどって、その場所に行けるはずだ。
私は本当にマザなのだろうか。どこかでドウタと入れ替わわってしまったのではないか〜私が私の実体であることをどのように証明すればいいのだろう?
物語は通路の扉を開けようとするところで象徴的に終っている。
物語を読み込まなくてはならない。それは青豆にとっては、人の生死が賭かったきわめて実際的な物語なのだ。マニュアル・ブックのようなものだ。
ドウタは通路となって「あけぼ� �」を自滅へと追い込み、残された「さきがけ」を排他的な宗教団体へと変貌させた。
男がレイプしたのは少女たちの影
善悪を超えたものごと
物語が彼女の乗り物となる
そして天吾がパートナーとなってその物語の立ち上げを助ける。
すべてはこの物語からは始まっているのだ。
「反リトル・ピープル的モーメント」の通路に引き込まれてしまった
つまり、私は天吾の立ち上げた物語の中にいる
私は今、天吾くんの中にいる
これが王国なのだ、と彼女は思う
主人公は十歳の少女
「集まり」に属している
「集まり」はシホンシュギ(ブッシツシュギ)の海に浮かんだ美しい孤島でありトリデ。
「集まり」は二つのグループに分かれ、ひとつはカクメイを目指すグループ、ひとつはピースを目指すグループ。
「集まり」の中で暮らす人々
五十人ばかりの比較的若い男女
子供たち
「集まり」の子供たちは気味悪がられ、いじめられたのでひとつにまとまって行動した。
危害や心のオセンから身を護った。
独自の学校
独自の教科書
「リコ的な政治家」=悪魔の王様
リトル・ピープル
『白雪姫と七人のコビトたち』みたい
しゃがれた声の 小さな声の
テノールの
バリトンの
はやし役の
甲高い声の
リトル・ピープル
リーダー
空気さなぎ
全体から淡い光、美しい曲線、真ん中にくびれ
画家
クルミという娘
一人の醜い男の子、トオル
マザなしのドウタ
心の影を失った少女
三匹の黒い蛇
役目を終えた老廃物
十歳
山中にある小さな「集まり」
共同生活
家族三人
地域の小学校
十年近く前
社会に大きな動き
三階建て
八人から十人の子供たち
三日目の夜
山羊の口、通路
十センチ
六人から七人に
一メートル三○センチから四○センチ
一万円札と小銭と紙片
高尾山近くの山の中の家
ブラームスの交響曲、シューマンのピアノ曲、バッハの鍵盤音楽、宗教音楽
高尾山
『不思議の国のアリス』のトランプの女王や、時計を持ったウサギ
古いSF映画
顕微鏡でしか見えないところまで縮小し、患者の血管に入り、異物を排除しようとする白血球と闘いながら、病根へと向かい、それ(リーダー)を「削除」することに成功した
間違いない。月は二個ある。
もうひとつはずっと小振りな緑色の月、いびつで明るさも劣っていた。歓迎されない貧しくて醜い遠縁の子供のよう
その文章を書いたのは天吾だった。
現実が比喩を真似たりするだろうか?あり得ない
ここは小説の世界なのだろうか?
ウサギの穴に落ちたアリスみたいに
母親の幻影に襲われていないことにふと気づいた。
人々はinsaneとlinaticのあいだを無表情に行き来している
青豆はどこにいるのだろう
ほうほう
ほうほう
二つの月
心臓の音
赤ん坊の彼、白いスリップ姿の母親の幻影
はやし役
残りの六人
七年間高円寺の街で暮らしてきた。家賃の安いアパートの部屋
コカコーラのマーク
旧型のフォルクスワーゲン・ゴルフ
21
章
22
章
思い出せるのは、鉢植えのゴムの木
どうしてこんなにゴムの木のことが気になるのだろう?
そこにある生命を、金を払って自分個人のものにするというのは、適切ではない行いのよう
孤独、ひどい死に方、涙
『ミクロの決死圏』の科学者みたいに
そのときふと気づく
間違いない。彼は私と同じものを見ている
それは天吾だった
どうすればいいのだろう?
二つの正反対の力が彼女の中で激しくせめぎ合っていた。
非常階段を三階分駆け下りる
もう天吾の姿はない
都会の騒音が、通奏低音となって彼女を取り囲んでいた。
私には用意ができている
その前に、訪れなくてはならない場所がある。
ゴムの木
金魚鉢
あゆみ
児童公園に一人の若い男の姿
月の裏側より暗く冷たく、がらんとしている無人の滑り台
通奏低音
ちっぽけな蜘蛛
ベランダ
南西の空に、月がくっきりと二個
バーゲンで千八百円になっていたが千五百円にまけてくれた
二度と
ウェストバンドには九ミリの自動拳銃
聖書
『ミクロの決死圏』
でんわがあった
千倉の療養所から
昏睡状態
生命を維持しようとする自然な力が、目に見えて水位を落としている
維持するための自助努力を放棄
手のかからない人でした
ねこのまちにいく
僕らは『空気さなぎ』に描かれた世界に入り込んでしまったということなんだろうか
わたしたちはふたりでホンをかいたのだから
あなたはレシヴァのやくをしている
特殊な資質
わたしがパシヴァであなたがレシヴァ
しんぱいしなくていい
わたしがチカクしあなたがうけいれる
そのひとがあなたをみつける
あなたはかわった
ネコのまちにいけばわかる
ふかえり
医師
父
石
小さな美しい耳をひとつ露
部屋に戻る
鉛筆
二十本
八時半
六十代
三日目
もう一度唇を噛んだ
明日
千倉
『峠の我が家』
の単調なメロディー
まずくて薄い
食堂のコーヒー
コーヒー
白ワインがあれば
23
章
24
章
天吾に巡り合えたこと
奇跡、啓示
身体の組成を大きく変えた
「まず用賀まで行って、それから首都高速の三号線を池尻出口の手前まで行って」
「保険会社の調査員」
「映画みたいですね」
「お客さん、そういえばどことなく、その頃のフェイ・ダナウェイに雰囲気が似ているんじゃないですか」
「どうもありがとう」
あのときと同じ看板
タイガーをあなたの車に
「左の車線に移って」
「ここで降りるからドアを開けて」
「非常階段があるから大丈夫」
「もし警察か会社から、私のことで何か言われたら、ピストルを突きつけられて脅かされたとでも言いなさい」
ここが1Q84年の出発点だった。
もう一度同じことをやってみる。
顔を歪めた
出口はふさ� �れてしまったのだ
1Q84年から1984年に戻るための道はない。その世界に入るドアは一方にしか開かないのだ、と。
彼女はその事実を確かめた。
証明終わり。 Q.E.D.
本物の銃
祈りの文句
大事なのは、神様があなたを見ているということ〜誰のその目から逃れることはできない。
ビッグ・ブラザーはあなたを見ている。
「天上のお方さま。あなたの御名がどこまでも清められ、あなたの王国が私たちにもたらされますように。私たちの多くの罪をお許しください。私たちの ささやかな歩みにあなたの祝福をお与えください。アーメン。」
チェーホフも言っているように、物語の中にいったん拳銃が登場したら、それはどこかで発射されなくてはならないの。それが物語という ものの意味なの。
タイムアップ。そろそろショーを始めましょう。
「ほうほう」
「ほうほう」
「天吾くん」と青豆は言った。
天吾
タクシー
運転手
三十代前半
渋滞中の車の列
身なりの良い中年の女性
朝六時過ぎ
(9/3月)
美しく晴れた朝
七万二千回、七万二千一回
児童公園
十二時間ばかり前
五分
滑り台のステップ
大きな通り
一万円
環状八号線
首都高速道路三号線上り
渋滞
一万円
五十メートル
見覚えのある非常用駐車スペース
申し分のない天気だ。深い青を背景に、まっすぐな細長い雲
480グラム
意識の宿る灰色の迷宮
七発の醜い九ミリ弾
コーヒーメーカーでコーヒー
トースト
シャルル・ジョルダンのハイヒール
『華麗なる賭け』フェイ・ダナウェイ(BOOK.1ではマシンガンを持ったフェイ・ダナウェイ)
レイバンのサングラス
ミシェル・ルグラン
駒沢
レモン味の咳止めドロップ
ジュンコ・シマダのスーツ
シャルル・ジョルダンのハイヒール
ヘックラー&コッホ
銀色のメルセデス・ベンツ・クーペ
ジバンシーのサングラス
何もないがらんとした草原の真ん中に静かに停止しようとしている。救いは、車内にはもう、一人の乗客も残ってはいないということ
「お父さん」
この男は死のうとしている
話しかけなくてはならない
礼儀の問題
天吾の人生のあらましを語る
失った接点、その大いなる空白をできるだけ埋めておいた方がよい
天吾の高校時代
奨学金と生活のための柔道
数学への情熱の薄れ
人生の中心を失ってしまったようだった。
凪のような静謐
近づく女性たち
恋愛感情ももてず、何事に対しても神経を集中することができなくなっていた
大学を卒業し、予備校で数学を教え、気兼ねなく一人の自由な生活を送ることができた。
そして『空気さなぎ』に出会う
僕にとって切実な問題は、こ� ��まで誰かを真剣に愛せなかったということ〜例外というか、一人の女の子のこと、二十年も前の話、臆病だった。でも最近になりようやく変化を遂げつつあるみたいだ。
明るい言葉は人の鼓膜を明るく震わせる〜明るい言葉には明るい振動があります
検査室にお連れします
ベットには父親のくぼみ
見かけたことのない白い物体
落花生の殻に似たかたち
空気さなぎだ
優美なくびれ
装飾的な丸い瘤
天吾の考えついたこと
一筋の裂け目、仄かな光
指を入れ押し広げた
青豆、と天吾は口に出した。
言葉は少女の鼓膜をわずかに震わせ、青豆はその呼びかけを遠い場所で耳にする。
天吾くん、と彼女は思う。
彼の心はかたちのない祈りを宙に紡ぎ� ��していた。
少女の手に触れた
それが二十年前のパッケージの意味だった。
僕は必ず君を見つける。
これからこの世界で生きていくのだ、この月の二つある世界を生き延び、歩むべき道を見いだしていくだろう。この温もりを忘れさえしなければ、この心を失いさえしなければ。
そこがどのような世界であろうと、彼女がたとえ誰であろうと。
中年の看護婦
田村看護婦
担当の医師
五十前後
大学運動部のコーチのよう
若い看護婦
「安達」
ひとまわり小さく縮んで見えた父親
看護婦
「大村」
髪にボールペンを差した大村看護婦
大村看護婦
二人の男たち
美しい十歳の少女
青豆
東京駅を出る特急列車
(9/3月)
きれいに晴れ上がった朝
一時過ぎ
療養所
夕方六時半くらいまで
一人部屋の白い髭
二日分
二十歳
三時前
一口
社会との唯一の接点
五時過ぎ
夕方七時前の電車
三十分ばかりあと
二十分
一メートル四○センチから五○センチ
二センチ
コーヒー
日本茶
ミネラル・ウォーター
お茶
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